PJ Report 2000/3
Q&A

質問

[1]酸素供給法で、定流量タイプ「リブリーザーマスク」現在入手できるものは、

100%酸素が供給できないようになっていますが、理由があるのですか?

またこの穴をテープなどで塞いで100%酸素を供給してもいいのでしょうか?その時の注意点はありますか?

酸素供給法で使用されるマスクについては良く質問を受けるので、簡単に説明いたします。定流量タイプのマスクは意識があり、自発呼吸をしているダイバーに用いられるもので、いくつかのタイプがあります。

1,ノンリブリーザーマスク

リブリーザー(酸素だめの袋)に逆止弁がついており、高濃度の酸素が吸うことができます。また、吐くときにはマスクについた方の逆止弁から息が吐き出されます。これはデマンド式吸気バルブが耐えられない事故者に勧められます。適切な技術があれば90%の酸素が供給できます。

2,パーシャルリザーブマスク

シンプルフェースマスクにリブリーザー(酸素だめの袋)がついたもので、顔にぴったりとフィットしていなくてはならず、かつ6リットルの流量が必要です。最高60%位までの酸素濃度が供給できます。

3,シンプルフェースマスク

リブリーザーがなく、マスクの横に穴があいており、周りの空気と酸素が混ざって酸素が吸入されます。これは35〜60%位の酸素濃度しか供給できません。

2と3は中濃度以下ですから、ないよりはましですが、潜水事故者には不向きです。ご質問のリブリーザーマスクとは、「穴をふさぐ」とありますから、これは2を指していると思います。もともと潜水事故者には不向きなマスクですが、この穴をふさぐことはいくつかの問題点があります。穴をふさいだとして次の問題があります。

まず、顔にフィットさせていれば、呼気はどのようにマスクの外に出せばよいのか、ということです。吐く瞬間だけマスクをはずす必要があるわけですが、その都度周りの空気がマスク内に入るわけで、結局高濃度酸素は吸えません。次に1の場合でもそうですが、ほんの数十秒でも監視の目をゆるめると、酸素が切れてしまった時に窒息するわけです。

どのマスクを用いても、構造上、以上のような重大なトラブルがないように安全を考えてできているので、定流量式では100%酸素が供給できないようになっているのではなく、100%酸素を供給することがどうしてもてもできないと言うほうが正解です。

デマンド式吸気バルブと専用フェースマスクはむろん定流量式ではないので、酸素の節約がかなりでき、ほぼ100%の酸素が供給できます。しかしこれは大変高価ですから、これが用意できないときには1のノンリブリーザーマスクがよいでしょう。決して一般に入手できないということはありません。DANに問い合わせてください。購入業者を教えてくれるはずです。

[2]クラゲに刺された場合のファーストエイドとして氷で患部を冷やす方法と

ぬるま湯につける方法があると聞いたのですが、どちらが正しいのですか?

または使い分けたほうがいいのでしょうか?

クラゲの触手には刺胞というものがあり、ここから棘が飛び出して皮膚に刺さり毒が回るのです。刺されたら絶対に擦らないことです。まず、お酢(または大量のお酒)をかけるとこの刺胞が引っ込んで、かつ毒を中和できます。それから手を使わずにタオル、ガーゼ、棒、ピンセットなどでそっと触手をはがします。その後にタオルで圧迫して毒をおし出します。こうすると毒が周囲に回らないのです。それから、さらにお酢をかけるとより効果的です。そして我慢できる、やけどしない程度の熱めのお湯(40〜50度ぐらい)に30〜90分ぐらい浸けます。海洋生物毒はタンパク毒ですから、熱で変性し、無毒化できます。(他の海洋生物毒もお湯が同じように有効です。)その後に抗ヒスタミンの薬などを医者にもらって使うと良いでしょう。時間が経ってしまって、痛みやかゆみ、腫れが強いときには氷で冷やすと気持ち良いですが、毒を中和したり変性させることはできません。

結論を述べますと、ファーストエイドとしてはお湯が正解です。時間が経ったものは冷やすのも楽にはなりますが、治療的効果は大きくはありません。

[3]糖尿病の緊急時、「糖分を与える」とありますが、市販のお菓子・ジュースで人工甘味料が使用されているケースが多くなってきています。与えるものを選ぶ時に注意をしたほうがいい成分表示などはありますか?

インスリンを自己注射している糖尿病の患者さんが起こす昏睡やショックは、低血糖性か高血糖性かは一般の人にはもちろん、症状からは医師でも区別が分かりにくいものです。インスリンが効きすぎての低血糖性ショックの時にはすぐに糖分を補給しないと、数分で脳障害が起きたり死亡することが起こり得ますが、インスリンが足りない高血糖性昏睡の場合に糖分を与えても、状態を悪化させるリスクは低いのです。これはあとから医師によってゆっくりと治療ができるような余裕がある、いますぐ死んでしまうことがない病態です。ですからMFAインストラクターマニュアルにもあるように、分からないときには与えすぎをおそれずに十分な糖分を与える事が推奨されるわけです。ところで、血糖値とは血液中のブドウ糖の値ですが、ご指摘の通り最近は人工甘味料が普及しているのですが、これらは全く効果がないわけです。例えば今はないけれどもチクロ、今流行のステビア、キシリトールなどです。ですが効果のない成分表示を知るよりも、ブドウ糖、ショ糖(これはほとんどがブドウ糖だが、その他にいくつかの糖類が混ざっている)と書かれているものを選べばよいわけです。ただし、意識がない場合には口の中に糖分を放り込んでも飲み込めないので、ほとんど効果は見られません。この場合には静脈注射によるブドウ糖の血管内補給しか方法はないのです。むしろ、意識がない患者の口の中に飴などを入れることは、最近では気道閉塞(チョーキング)を招き危険とされています。また、高血糖性昏睡の場合には、医師によってインスリン注射を始めとする各種治療が数日間かけて安全に行われます。ですからマニュアルにもありますように、例え患者さんがインスリンを所持していたとしても、また患者さんに意識があって注射を要望したとしても、決してインスリン注射を打たないでください。万一低血糖発作であった場合はもちろん、たとえ高血糖性のものでも注射量を誤って効きすぎると数分で死亡することがあり得ますし、自己注射以外は医師法に触れることです。

[4]怪我の評価で「脊椎」がありますが、車の座席に座っている場合等、現状を維持しての評価が難しい場合がありますが、よい間接評価方法はありますか?

意識があれば、手足が動かせるかどうかで分かります。脊髄損傷があれば、片側または両側の手足が動かない場合、両足だけが動かない場合などがあります。もちろん、手足の骨折がないにもかかわらずです。手足の評価をして骨折が疑われないのに動かせなければ、脊椎損傷を疑うべきです。また、状況判断もかなり有効です。授傷機転から、シートベルトをしている時の前方への突っ込み事故、ヘッドレストがない場合の激しい後方からの追突事故であれば頸椎の脊髄損傷が考えられ、この場合多くは両手両足の麻痺が起きます。下手をすると呼吸も止まります。どうしても現状を維持しての評価が十分にできない場合には、できうる範囲だけの評価をして、初期ケアーのサークルを続け、救急隊の到着を待ちます。また、意識がない場合、脊椎の評価はほとんど不可能です

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