Diving World 1999/11
寒さを感じる限界

「寒さを感じる限界」

1、低体温症の実例


低体温症とは、熱を奪われ身体の深部の体まで体温が下がり、その結果運動能力や思考能力が低下してしまい、重症だと不整脈を起こしたり死亡してしまいます。水は空気に比べ熱伝導度では25倍、比熱で1000倍大きいので、水中では熱損失が大きいのです。例えば子供が長い時間プールに入っていて唇が青くなる状態が軽い低体温症です。タイタニック号の乗客が死亡した原因のほとんどもこの低体温症です。下調べをせずに海外へダイビングに出かけ、水温が17℃しかなかったのですが3mmのウエットスーツしか用意しておらず、無理をして3本の潜水をしたところ、震えが止まらなくなって手足の動きが悪くなってしまい、潮に流されて危険な状況に陥りました。泳ぎあがれないのでBCDにエアーを入れ、吹きあがりながらもかろうじて浮上したまではよかったのですが、その後2時間も漂流し、救助されたときにはほとんど意識がなかったというダイバーがいました。潜水計画は出発前から始まるのです。あらかじめ行く場所の下調べをしましょう。

2、低体温症を防ぐ好例

低体温症を防ぐには、まず潜水前、その潜水海域のコンディションやダイビングスタイルにあった保温スーツおよび装備を選ぶことが大切です。流氷ダイビングでは5mm以上のドライスーツ、一般のダイビングでは、個人差がありますが水温21度〜24度以下では通常のドライスーツ、フードの着用といった具合です。いくら暖かいところでも水温33度を超えることはまずないため、長時間の潜水や反復潜水によって低体温症に陥る可能性があるので、冷え込む事を遅らせることができるウエットスーツは着用すべきです。次に、潜水中に寒さを感じ震えだしたらすぐに潜水を中止することを考えて下さい。震えが止まらなくなったら危険な状態です。運動能力や思考能力が衰えてしまいます。そしてエキジット後、特にボートダイビングでは濡れた体が風にさらされるので、よけいに冷え込みます。ボートコートを羽織ったり、上半身だけでもウエットスーツを脱いでタオルで拭き、乾いた衣類を着込む事が何よりの予防策になります。濡れたままですと、水分が蒸発するときに気化熱が奪われて冷え込むのです。地上で冷えてしまうと次のダイビングに影響が出てしまいます。

3、寒さに強くなるための工夫

 人間の体を寒さに慣れるよう鍛えることはほとんどできません。皮下脂肪の厚さが体温喪失を予防できる大きな一因子なので、太ることが低体温症予防にはよいということになりますが、現実性に欠けます。ですから水温や装備、個人差を考慮して潜水時間を短く計画するのが一つの方法です。その他には前述のごとくフードの着用が大きな効力を発揮します。体が冷えると手足の血流は低下して、体温が放出されるのを防ぐように働きますが、頭部の血流はあまり低下しませんので熱放出が大きいのです。荷物にならないフードをいつでもメッシュバッグに持ち歩いていると便利です。そして、寒いからといって動き回らず、じっとしていた方が熱損失が結局は少ないことを知っていて下さい。運動によって確かに熱産生量が増えますが、その結果血管が拡張したり水をかき回すことによって熱放出量はさらに大きくなるからです。震えをバロメーターにし、重大事故に陥る前に水から上がることが賢明です。

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