Diving World 1999/9
潜り方と体の影響

「潜り方と体の影響」

1、 1ダイブ中に深場、浅場と深度を大きく変えると、体にどんな影響が起こりやすいですか?

深度を浅くしたり深くしたりする潜り方は、ノコギリ潜水といわれるものです。ダイビングコンピューターはマルチレベル(何メートルの深度に何秒間いたか)に計算するため、深いところにずっといるよりもノコギリ潜水の方が潜水可能時間が長く出るので、一見得な潜り方のようにも思えますが、実は減圧症のリスクが高くなるのです。ですからノコギリ潜水の時にはダイビングコンピュータはかなり不正確な物になってしまいます。もちろんダイブテーブルでは計算不可能です。また、浅い深度から深い深度へは無減圧潜水時間が短くなる潜り方で、減圧潜水になる可能性があり、やはり減圧症のリスクがあります。深い深度から徐々に浅い深度へと一定に潜るのが一番安全でかつ長く潜れる方法です。浮上するごとに窒素が体から抜けて行くからです。一般的に潜降速度はいくら速くても圧平衡がとれていれば何ら問題はありませんが、浮上速度はゆっくりでなくてはなりません。ほんの数メートルでも、急速に浮上する事が減圧症を招き得ます。一般的に安全な浮上速度は1分間に18メートルを超えない速さと言われていますが、最近ではもっとゆっくり浮上することが提唱されてきています。


2、 骨折、怪我などが直らずに潜っているとどんな悪影響があるのですか?

 怪我といってもいろいろありますが、切り傷や縫い傷などは完全にふさがっていないうちは、海水中の雑菌によって傷口が化膿してしまう可能性があります。打ち身や捻挫は、運動制限があるかどうかによります。医者の判断が得られないときには、怪我の部位を動かしてみて、強い痛みがある時には中止しましょう。これは潜水に関係があるわけではなく、一般的な対応です。骨折は担当医からの運動制限がない段階までくれば、水圧で骨のつながりに影響が出るような事はないでしょう。潜水が新しい骨折に対してどのような影響があるかといったことは調べられていません。骨折のある人が潜水をすることがないからでしょう。骨折や怪我のあとのリハビリをする段階では、マラソンやスイミングをしても良いかどうか、20キロの荷物を背負っても平気かどうかなどでダイビングをしても良いかどうかがおおよそが判定できます。しかしいずれにせよ、運動能力が完全ではない状態のダイビングでは、予測不可能なトラブルに十分な対応が出来るとは思えません。事故を起こすようなリスクがない状態で潜ることがダイバーに必要な自己管理であり、本当に楽しいダイビングではないでしょうか。


3、アルコールが残っている体、たばこを吸った直後などはどうですか?

アルコールが残っている状態の潜水は減圧症のリスクが高まります。二日酔いの時に頭痛がするのは、アルデヒドという分解物質が血管を収縮させるからですが、血管収縮作用のある物質が減圧症のリスクにつながるのです。また、水圧によって残っているアルコールの作用が強まり、地上では醒めているようでも水中では泥酔状態になる可能性もあり、適切な判断が出来ずに危険です。そして、水圧で腹部が圧迫され嘔吐することもあり得ますが、慣れない水中での嘔吐は溺れの原因につながります。潜水にアルコールは厳禁です。タバコは一酸化炭素が多く、これが血液の中のヘモグロビンという酸素を運ぶ部分と強く結合して何時間も離れないため、同じように呼吸をしていても酸素運搬能力が下がるので、酸素欠乏による頭痛などを引き起こし易くなり、そしていつもよりエアーの消費量も早くなります。万一減圧症に陥って酸素供給を受ける際、その治療効率も悪くなります。たばこを常用している人は、肺のガス交換機能が低下しているために他の人よりエアーの消費が早かったり、気管支が狭くなったり痰がたまるなどして肺の破裂を引き起こす可能性も出てきますので、ダイバーは喫煙をしない方が得策です。 


3、 水分を多く補給した体で潜ると?逆に水分が少ない状態だと?

 水中などの高圧下では利尿作用が働き、トイレが近くなります。もちろん、冷えによってさらにこの生理現象は増強されます。それに加え、水分をたくさん取ると水利尿といってやはり利尿作用が働くので、潜水前の多量の水分はドライスーツの時に問題になる位でしょう。トイレを我慢すると膀胱炎や腎炎になることがありますが、それ以外は別に問題はありません。それよりも、炎天下で日光浴をして大量の汗をかいたあとや、下痢などの脱水状態の潜水は、かなりの減圧症のリスクになります。血液の粘稠度が高まってしまう上、血管が収縮してしまうので塞栓症を起こしやすくなるのです。これから考えれば、ドライスーツだからといって水分を絞って潜るよりも、補給して潜った方がよいでしょうね。むしろエキジット後に普段より多めの水分を取ることが減圧症発症のリスクを減らすことにつながります。血液粘稠度を減らし、血管を広げ、血液中の窒素濃度を薄める事によって小さな窒素の気泡同士がくっついて大きな気泡になるのを防ぐ効果があります。よく潜水直後の炭酸飲料が減圧症を起こすので良くないようなことをききますが、理論的には炭酸であることに何の問題もありません。

Copyright@1999-2007,Miho Clinic All Right Reserved
dw998dw996