Diving World 1999/3
潜水と体・病気との関係

1. Q:28才ですが、近視から、緑内障になっているといわれました。今現在、2種類の目薬で左右の眼圧は20~24。いつも不安なのですが、影響は?

A:眼球の中には房水という液体があり、産生されては吸収されるという循環が行われています。緑内障とは、この房水の過剰によって、眼球内の圧力が高くなっている状態で、網膜剥離により視野の欠損や、重症では失明も起こり得ます。緑内障には2種類があり、房水の産生が過剰で起きるものを解放偶角緑内障、房水の吸収が悪くたまり過ぎるのを閉塞偶角緑内障といいます。この治療として、薬によって眼圧をコントロールします。目薬には、(ブロッカーや房水産生を抑えたり、房水の吸収をよくする薬などがあります。手術的な治療としては、レーザーによるものと、眼球にメスを入れるものとがあります。ダイビングに対しての緑内障の問題点には、(ブロッカーの使用と切開手術の既往です。(ブロッカーは、たとえ目薬といえども、正しい使い方をしないと喘息発作様の症状が現れることがあり、潜水には危険です。これを予防するには、点眼の際に必ず目の鼻側の下を指で押さえて点眼し、5分間ほどそのまま待って、残りを拭き取ることが大切です。そうしないと、目薬が鼻に入り、それを飲み込んで血液中に入り込むからです。また、眼球にメスを入れる手術を受けるとその部分は弱いので、重度のマスクスクイーズを起こした場合、眼球破裂を起こした例があります。
 ご質問の方の年齢や、近視から起きたことから、解放偶角緑内障と思われます。手術の既往については不明ですが、この場合、万一手術を受けているとしてもレーザー手術が一般的でしょうから、それなら問題ありません。また、正しく目薬をさしているのならこれも問題ありません。潜水で眼圧があがるというような報告は見あたりませんのでご安心下さい

2Q:夏から少しノドがかれたように感じています。たんなる長いカゼなのか、ダイビングが関係しているのか?熱もなく、頭痛もなくノドのみなのです。
  
  A:ノドがかれるというのは、声がれ(嗄声)のことでしょうが、
結論からいうとダイビングとは関係がないでしょう。声を出す声帯がやられる原因に、たばこ、声の使いすぎ、風邪による喉頭炎、喉頭の腫瘍、声帯の筋肉や神経の麻痺などがあげられます。漁師町で2年間診療したこともあるし、多くのダイビングスタッフを診察したこともありますが、海水や潮風によって声嗄となった人は見たことがありません。また、タンク内のドライエアーを吸いながら運動量の多いダイビングをしたときに、ノドがカラカラになることはあるでしょうが、一時的なものです。また、免疫が正常な人は、2週間以上同じ風邪をひいていることなどありませんので、むしろ他の声帯の病気に注意した方がよいでしょう。ダイバーが、潜水によって起きたと思って診察を受け、実際には関係のない病気であったことがたまにあります。潜水をすると耳から出血があるという人の外耳道腫瘍、潜水後よく熱がでる人の慢性扁桃炎、足首が痛み減圧症を心配してきた人の骨のヒビ(潜水の1週間前に転んだ)、物が2重に見える人の脳腫瘍、耳が痛い人の虫歯など、多岐にわたります。ダイビングが原因かどうか不明なときは、とりあえず潜水医学系の医者を選んだ方が無難でしょう。

3.Q:いつもダイビング後、温泉が好きで暖まっていたのですが、これはやはり気泡化を促進しているのでしょうか?いけないことですか?

 確かに潜水後の入浴は、気泡化を促進する方向に働きますが、それで必ずしも減圧症になるとは限りません。体に貯まっている窒素の量、体調、個人差、高所移動など、またエキジット後から入浴するまでの時間、入浴している時間、お湯の温度など、かなりの要因で異なってきます。ですから、気泡化促進すなわち減圧症の、ほんの一要因でしかないのです。しかし、冬のダイビングは体が冷えるのでハイポサーミア( 低体温症)も問題です。減圧症のリスクを高めずにハイポサーミアを防ぐには、ドライスーツの着用、長い時間の潜水を控え、エキジット後はすぐに体を乾かして防寒着を着込み、強すぎない暖房で暖をとり、ゆっくりと徐々に体を温めた方がよいでしょう。急激に血流をよくすることが減圧症のリスクなのですから。入浴は、エキジット後最低1時間、できれば2時間以上は高所移動せずに休んだ後に、ぬるめで短時間の方が無難でしょう。ここで強調したいことは、何がリスクがあるかを知っていて行動をしてもらいたいのです。以前、冬の伊豆でウエットスーツで流れに逆らって深く長く反復潜水し、潜水直後に熱い温泉で熱燗を飲み、箱根でバスケットボールをやっている最中に減圧症になったダイバーがいました。さて、このダイバーにはいくつのリスクがあったかおわかりでしょうか。?@深く長い、?A反復潜水。?B潜水中の激しい運動。?Cウエットスーツでの冷え込み直後の熱い入浴と?D飲酒。?Eエキジット後間もない高所移動と?Fエキジット後の激しい運動。といった多くのリスクを自ら負荷してしまったのです。?C以降はいずれも急激に血流をよくしてしまう行為です。結果論でわかりませんが、これらのうち、1つでも多くリスクを減らしていれば、ひょっとすると減圧症にならなかったかもしれませんね。

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