Diving World 2000/6
ビギナーダイバーの気になる12項目

「ビギナーダイバーの気になる項目12」

1、有害な海洋生物ってどんなものがあるの?その対処、治療法。  有害な海洋生物には、モンガラ、ダツのように毒がなくて刺される、噛まれるといったものと、クラゲやイモガイ、ガヤなどのように毒にやられるものとに大別されます。猛毒であるカツオノエボシ、アンボイナガイ、ヒョウモンダコなどは神経毒で、希には死んでしまうことも。その他の毒は弱毒ですが、イソギンチャクやサンゴでもアレルギーによるショックに陥ることがあるので注意。しかし有害な生物による怪我も、多くはダイバーの不注意によっておき、ほとんどが軽症です。わずかな認識と配慮があれば防げる。例えば巣を作ってテリトリーを守るゴマモンガラを見かけたらよけて泳ぐ、ナイトダイビングでは光を見るとダツは突進してくる習性があるので、水面ではライトを下にしか向けない、中性浮力を保ち何も触らない、ビギナーは長袖のスーツとグローブを着用するなどです。治療は外傷だけでしたらその処置だけですが、毒性の物はできるだけ棘や刺胞をそっと取り除き、こすらず流水で良く洗う。さらに海洋生物毒は熱で変性し不活化できるので、40〜60度のお湯に60〜90分浸けます。そして食酢をたっぷりかけて中和します。これら処置の後でもかゆみや痛みが強ければ病院へ行きましょう。

2、低体温症ってどんな恐い?対処法  空気中と比べ、水の中では20〜25倍の速度で体温は奪われます。体の中心部まで冷え込むと低体温症(ハイポサーミア)に陥る。これは直腸温で35度以下(正常37度)になった場合をいいますが、36度前後においても人によっては判断力や繊細な運動能力の低下があることも。体温が2度下がると、止まらない震えが起こり、思考がスムースにいかなくなり、泳ぐ能力も低下する。3度低下すると、会話が困難になり、身動きがとれなくなります。通常のダイビングでは起きえませんが4度以上低下すると意識がなくなり、不整脈にて死亡します。流氷ダイビングではむしろ厳重な装備や潜水時間を10〜15分にするなどの注意をするため、低体温症になった話はほとんど聞きませんが、それよりも暖かい南の海で反復潜水する事によって起こる軽症の低体温症が多いようです。長時間潜水しても低体温症にならない水温は33〜35度。水温が高いと言っても30度以下が多いと思います。皆さんも南の海で潜っていて、水温27度なのに寒く感じることはあるはずです。震えだしたら低体温症の始まりのサインです。低体温症は潜水を中止すればすぐに解決できるので、我慢しなければ恐くありません。

3、窒素酔いって? 窒素酔いとは、水深約30mより深いところに潜ると、水圧の影響により血液中に溶け込んだ窒素が脳に働き、麻酔様の作用をするため、気持ち良くなったり、おかしな行動をとったりすることです。窒素酔い自体は何ら健康上の害はありませんが、起こすと理性を失い、おかしな行動をとって危険なことも。窒素酔いを予防するためには、前日のお酒は控えめにし、十分な睡眠をとり、体調に気をつけることです。起こしやすい人と強い人の個人差が大きいのですが、普段起こしにくい人でも体調によっては起きてしまうので、自分を過信しないこと。そして、いくら無減圧時間内だとしても深い潜水は避ける。窒素酔いの症状としてはエアーが甘く感じる、光や色が原色に見える、気持ち良いなどです。これらの異常を感じたら、ゆっくりと15〜20m以浅に上がる。そうすれば瞬時に治ります。そして、自分がコントロールできないような状況では、バディーやインストラクターに助けてもらうしかないのです。バディーシステムを厳守することの必要性はここにもあります。最後に、眠気を起こす可能性のある薬は窒素酔いのハイリスクです。地上で飲んでみて眠気が起きたら潜水時には使用しないでください。

4.深く潜るとどんな危険が?浅いと心配ない? 深いところで空気を吸うと、水圧のために血液、筋肉や脂肪中へ窒素が溶け込む。そして浮上中にこれらの窒素が気泡化してくる。ですから浅くても急浮上するのが、減圧症を一番起こしやすい。最近では水深10mからの浮上は10分(1m1分)で上がることが推奨されています。ゆっくり浮上すれば理論的には減圧症は起こりにくいのですが、ゆっくり上がっても、無限圧時間内でも起きてしまうことがあるので要注意。その他の注意として水中やエキジット後は激しい運動をしない。さらに体調管理も重要です。二日酔い、下痢などの体調では禁物。また、上がってすぐのアルコールや、熱いシャワーを浴びるのも気泡化を促してしまう。要するに急に血流を変えるようなことがハイリスクなのです。市販の点鼻薬や、外国の耳抜き用飲み薬などの血管収縮剤を使用して潜るのも危険。もちろん、飛行機搭乗する日は潜らない。最近はダイビング後の高所移動(山越え)による発症が目立っています。潜水後は水分を多めに取るとよいでしょう。そしてダイコンやナイトロックスも有用ですが、過信しないように。そして安全停止は常識。万一減圧症を疑えば、なるべく早く専門の医師の指示を仰ぐことです。

5、薬を飲んで潜る危険性。お酒、たばこの危険性  アルコールが残っている状態の潜水は減圧症のリスクが高まります。二日酔いの時に頭痛がするのは、アルデヒドという分解物質が血管を収縮させるからですが、この血管収縮作用が減圧症のハイリスクに。また、水圧によって残っているアルコールの作用が強まり、地上では醒めているようでも水中では泥酔状態になる可能性もあり、適切な判断が出来ずに危険。そして、水圧で腹部が圧迫され嘔吐することもあり得ますが、慣れない水中での嘔吐は溺れの原因に。潜水にアルコールは厳禁です。そしてたばこは一酸化炭素が多いので酸素を運ぶ能力が低下し、同じように呼吸をしていても酸素運搬能力が下がるため、酸素欠乏による頭痛などを引き起こし易くなる。そしていつもよりエアーの消費量も早くなります。また、万一減圧症に陥って酸素供給を受ける際、その治療効率も悪くなります。その他に、たばこを常用している人は気管支が狭くなったり痰がたまるなどして、肺の破裂を引き起こす可能性も出てきますので、ダイバーは喫煙をしない方が得策です。

6、耳抜き不良を解消、耳抜きを無理にすると?   もともとダイビングに適さない耳ってある? よく生まれつき耳管が細いので耳が抜けにくい、などということを聴きますが、そんな事はほとんどありません。実はビギナーの耳抜き不良の半分位がテクニック的な問題。要するにへたくそということです。バルサルバによる耳抜きは、抜けないのに無理に強くやると内耳が破裂してしまい、激しいめまいや難聴、耳鳴が起きて手術が必要になってしまうこともありますが、かといって弱すぎてはもちろん抜けない。また、唾飲みや顎を動かす方法では抜けないタイプなのに、バルサルバをやらない人もいる。これらは耳管機能検査で簡単に診断でき、すぐに解決します。しかし適切な耳抜きをやっているのに抜けない人もいて、当院の統計では約90%にアレルギー性鼻炎が、約30%に蓄膿症がいます。これらは慢性的な鼻炎で、鼻の中と一緒に耳管の出口が腫れている状態。検査をして原因を突き止め、鼻炎を治療するとほとんどの人が抜けるようになる。しかし逆にどんなにひどい鼻炎があっても、ちゃんと抜ける人がいくらでもいるから不思議です。抜けない人は検査をし、鼻炎が原因なのかテクニック的問題かを見極め、治療すればほとんどの人が抜ける様になるので御安心を。

7、パニックの恐さ これは誰にでも、突然起きる可能性を秘めているものです。ほんのわずかな出来事が引き金になり、いわれ様のない不安に陥って、これから逃れようとはた目からはかえって危険な行動をとってしまう状態。例えばゲージが何かに引っかかって引っ張られている感じがしたり、ウエットスーツがきつく、胸に圧迫感があって呼吸ができない気がしたりということから始まります。心臓がどきどきし、浅くて早い呼吸になり、そして海面に急浮上したり、海面ではウエイトを捨てずにレギュレーターをはずし、BCDにエアーも入れずにフィンキックだけで浮こうとします。その結果、肺破裂や溺れなどで死亡することも。パニックに陥るのには体調不良、悪い透明度や流れなどの経験不足、性格、器材の不備などの複線があります。ですから、体調を整え、器材のオーバーホールは定期的に行い、ビギナーは知識や経験の不足で不安を感じるときには見栄を張らずにインストラクターや上級者に相談すれば簡単に防げる。そして何かトラブルがあれば、まずは止まって落ち着いてよく考え、それから行動すれば、ほとんどの問題は回避できるはずです。

8、腰の負担、重い器材のからだへの障害 ダイビング器材はドライスーツですと20Kgにもなります。このほとんどを腰よりも上につけなくてはなりません。このような重い器材を装着して動くので、腰をひねったり、筋肉を酷使することによっての筋疲労が腰痛の原因になることが。腰に負担を減らす事が腰痛を起こさせなくするので、適正ウエイトを早く習得しましょう。ダイビングで腰痛がひどくなる人のほとんどが、もともと腰痛持ちの人が多いのです。ぎっくり腰、椎間板ヘルニア、椎間板分離症などです。最近は60歳以上のダイバーも見かけるようになり、希には骨粗鬆症による圧迫骨折が起こる場合もあります。この様なリスクのあるダイバーはタンクを水際まで人に運んでもらったり、ウエイトも水面で装着するなどのケアーが必要です。この場合スキル的に不安がある場合には、足がつくところで行ったり、インストラクターやバディのアシストを受けた方が安全です。しかし一度ひどく腰を痛めてしまったら、治るまではダイビングを中止する方が賢明でしょう。膝が弱い人は膝に負担がかかることもありますが、これも人に手伝ってもらい重量負担を減らす事で解決します。

9、女性特有の問題、生理中のダイビング、産後、産前のダイビング 女性は脂肪が多いので、低体温症には陥りにくいといわれています。しかし個人差は大きいです。また、脂肪は窒素のとけ込む量が多く、減圧症のリスクが男性よりも高いといわれていますが、日本ではダイバーに男性が多いためか、男性の方が減圧症患者は多いので、事実関係ははっきりしません。また、生理中、ダイビングをしても問題ありません。ただし、ひどい痛みや精神的に不安定になるような場合は考え物。痛みについては鎮痛剤で解決しますが、市販薬よりも医者が処方する成分の方が安心。医師に相談し、薬を使って生理を遅らせるか早めてしまう方法もある。薬を使って生理周期をずらすことに抵抗がある方は、生理用品で潜っても問題ないのですが、最近、タンポンの利用率の増加に伴い、重い生理や不妊が起きる子宮内膜症という病気が増えていますので、パットタイプの方がわざわざダイビングのためにタンポンをチャレンジするのはお勧めしません。また、妊娠中はダイビングは厳禁。ダイビングの新婚旅行中に妊娠した事が後から分かった場合、ほとんど心配することはありませんが、一応婦人科の先生には報告しておきましょう。出産後は体力が戻りむくみがとれる1ヶ月以降からが無難でしょう。

10、日焼けの障害、こわさ  日焼けの下地のない人が、昼間いきなり日光浴をしているのを見かけることがありますが、かなりの人が後悔することになります。シミ、皮膚癌、やけどの元です。日焼けは赤みだけ(1度熱傷)の場合、40分以上水で冷やすと1週間で治りますが、水疱を作るほど(2度熱傷)になると治るのに3〜6週間必要。もちろん水疱になったら、感染するのでダイビングは中止です。予防として日焼け止め化粧品を使用すべきです。SPF1とは20分間の日焼け止め効果を意味しますが、番号が大きくなると今度はかぶれやすくなるので、腕などで試してからが良いでしょう。現在SPF86までありますが、SPF15以上(5時間有効)が望ましいです。しかしこれらはまめに、そしてたっぷりと塗らないと効果がないといわれています。ケチってやけどを起こす人が多いようです。熱帯、亜熱帯の海外の紫外線量は日本の夏の3倍以上です。曇っていても相当日焼けをしますので油断しないで日焼け止めを使ってください。その他に、過度の日光浴は熱中症や脱水にも陥りやすく、思わぬ落とし穴がありますのでご注意を。

11、ダイビングでダイエット? ダイエットをするのに、よく水分を絞ったり、食べない方法でやる人がいますが、これほど不健康なことはありません。メニューを考えてきちんと食べ、水分は多めに取り、そして運動でカロリーを消費するのが最も良いダイエット方法。目的もなく走るよりも、ダイビングの方が楽しくダイエットできるはずです。ビギナーのうちは、ダイビングは走るのと同じぐらいの体力がいるのですが、ベテランになると歩く程度しか体力は使わなくなります。しかし、機材運び、水面移動、スキンダイビング、エントリーエキジットなど、結構カロリーは消費します。そして、海岸の土地で食べられる海産物、例えば刺身、焼き魚、さざえの壺焼き、ところてん、海藻サラダなどはダイエットに最適なメニューばかり。しかも筋肉運動によって、引き締まった足腰ができあがります。ダイビングでお腹をすかし、おいしい海産物でいつもよけいに食べ過ぎて、かえって太らないようにご注意を。そしてダイビングにもダイエットにも、水分は多めが良いことをお忘れなく。

12、泳ぐこと、ダイビングの健康面での好影響 ダイバーに医者や看護婦が多いのは、日頃ストレスがたまる職業だからです。ダイビングは広い空、青い海といった大自然の中で、日常のストレス解消になり、精神的に癒されます。その結果、ストレス性の胃炎や胃潰瘍治療には最適です。また、海にはオゾンが多く、肺をきれいにしてくれる。適度に日に当たることはビタミンDを活性化し、骨を強くする効果も。そして適度な運動とその後の食事のおいしいこと、時に温泉効果も手伝って、胃腸の活動が大変良くなり、便秘も解決します。もちろん水泳をすることによって心肺機能が活性化しますし、筋肉を使うことによって肩こりも解消、足や膝の関節も動きがなめらかに。また、アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎の方は水泳が推奨されますが、塩素やカルキーの強いプールよりも海水の方がずっと治療効果は高いようです。などなど、健康面での好影響は、あげればきりがありません。高齢になればおのずと体力は落ちますが、他のスポーツとは違い、その人の体力や運動能力にあったポイントやダイビングスタイルを選べば、病気をしていない限り末永く続けられるスポーツです。 13、ダイビング後の濡れた耳は綿棒掃除をした方がよい?  ダイバーが潜水後に綿棒で耳掃除をする光景をよく見かけますが、実はこれは大変良くないとです。そもそも耳垢は抗菌成分が入っており、ある程度あった方が耳には健康的。全くなくなるとばい菌にやられやすくなります。そうでなくてもダイバーの耳は耳垢が洗い流されがちで、通常よりも耳垢が足りない上に、ふやけたところにこするものだから簡単に傷がつくので、外耳炎に陥りやすいのです。しかも海の中には緑膿菌という薬の効きにくいばい菌が多く、ダイバーの外耳炎は難治性になりがち。さらには綿棒で耳垢を耳の奥に押し込んでしまう事があり、自分では取り除けない様な耳栓状態にしてしまうことも多いのです。耳の穴は皮膚ですから、放っておけばそのうちに蒸発します。どうしても音がこもって気になる様であれば、ティッシュで細いこよりをつくってそっと耳の中に入れ、水を吸い取る方法がよいでしょう。それでも耳閉感が取れないときには、中耳気圧外傷などの病気を考えた方がよいので、そのまま耳鼻科医におかかりになることをお勧めします。

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